氷の海の思い出 by Mory
2005年 02月 12日
セイウチ猟を撮影するために、流氷がまだ浮かぶ春の海へ出た。ボートはセイウチの皮を張り合わせたもの。ウミアックと呼ばれているものだ。今でこそエンジンがついているものの、皮一枚下は0℃前後の冷たい海。落ちれば5分以内に死ぬと言われる、まさに死と隣り合わせの命がけの猟。
この日は風が強く、波しぶきが船上にいる僕らに容赦なく襲いかかってくる。しかしぼくは海水に濡れながら、海と一つになったような暖かさ、そして懐かしさを感じ、恐怖心はなかった。その時一緒に乗っていたカメラマンは、機材を濡らしてはいけないという心配もあったのだろうが、荒れた海を恐れていたようだ。
同じ頃、ロシア人通訳の乗った別のウミアックが浸水し、水没しそうになっていた。幸い、大事に至る前に岸にたどり着いたのだが、彼は怖がってウミアックに乗りたがらない。カメラマンもそれを見て、乗船拒否。
結局撮影は中止になったが、あの時感じた「暖かさ」「懐かしさ」は今でも忘れることが出来ない。