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氷の海の思い出 by Mory

 番組の取材でシベリアのチュコト半島を訪れたときのこと。その沿岸部に住む少数民族チュクチの人々は、クジラやセイウチなどを捕って糧としている。
 セイウチ猟を撮影するために、流氷がまだ浮かぶ春の海へ出た。ボートはセイウチの皮を張り合わせたもの。ウミアックと呼ばれているものだ。今でこそエンジンがついているものの、皮一枚下は0℃前後の冷たい海。落ちれば5分以内に死ぬと言われる、まさに死と隣り合わせの命がけの猟。
 この日は風が強く、波しぶきが船上にいる僕らに容赦なく襲いかかってくる。しかしぼくは海水に濡れながら、海と一つになったような暖かさ、そして懐かしさを感じ、恐怖心はなかった。その時一緒に乗っていたカメラマンは、機材を濡らしてはいけないという心配もあったのだろうが、荒れた海を恐れていたようだ。
 同じ頃、ロシア人通訳の乗った別のウミアックが浸水し、水没しそうになっていた。幸い、大事に至る前に岸にたどり着いたのだが、彼は怖がってウミアックに乗りたがらない。カメラマンもそれを見て、乗船拒否。
 結局撮影は中止になったが、あの時感じた「暖かさ」「懐かしさ」は今でも忘れることが出来ない。
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        沈没を免れたボートが帰ってきた
by mory_and_meg | 2005-02-12 17:31 | Journey | Comments(0)

循環する暮らしを創造するMoryとMegの便り。畑、食、心身、先住民の智慧、Art、旅等Megは練馬区石神井公園にて女性専用鍼灸整体 音叉サロンを主宰しています。 All rights reserved. 写真・文章の無断転載を禁じます。


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