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アーミッシュ、あるいはメノナイトについて その1 by Mory

 Megが先日書いたように、野町和嘉氏の写真展『アンデス』を新宿のエプサイトで見た。野町氏は世界の「祈り」を30年以上追いかけているのであるが、この南米アンデスを舞台にした写真展でも35ミリポジフィルムの湿り気が、人間の祈りの息づかいを濃厚に伝えていた。とても見応えのある写真群だった。

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写真展会場の入り口


 正面から入らずに横の入り口から入ってしまったので、ぼくの目に最初に飛び込んできたのは、アメリカのアーミッシュの人々の姿だった。なぜここにアーミッシュ?と思いキャプションを読んでみると、それはボリビアに住んでいるメノナイトの人々だった。
 メノナイトは、アーミッシュと同じように現代文明と距離を置き、宗教的な共同体を作って生きる人々。ヨーロッパでの宗教的迫害を逃れ、遠く南米までたどり着き、今日までその信仰と暮らしを守ってきたのだ。彼らは電気も車も使わない。カメラ、飲酒、喫煙、音楽鑑賞、スポーツ競技、などなど一切ダメ。そのようなストイックな暮らしながら勤勉であるために、土着のボリビアの人々より豊かな暮らしを営んでいるという。メノナイトについては野町氏のHPに解説があるのでそちらも参照されたし。

 話は変わって、ぼくは20年以上前にアメリカ東部のアーミッシュが暮らす地域を訪れたことがある。その直前、ヨーロッパをバックパックを担いで貧乏旅行していたとき、旧ユーゴスラビアの首都ベオグラードで、ひとりのアメリカ人青年と出会った。彼の家がアーミッシュの住む地域、ペンシルベニア州ランカスターにあったのだ。
 ベオグラードで別れたあと彼がどこへ向かったかは知らない。ヨーロッパを列車で巡ったあとアメリカ東部をバスで縦断し始めたぼくは、その青年を訪ねようとランカスターを訪れた。と言うより、アーミッシュをモデルにした映画『刑事ジョン・ブック 目撃者』が公開されたあとでもあり、アーミッシュという存在に興味を抱いていたぼくは、彼らの住む土地を訪れたかったのだ。
 ランカスターに着き、例の青年の家に電話をすると、お父さんが出て彼はまだ旅から帰っていないという。「宿は決まっているのか」と聞かれたので、「決まっていない」と答えると、「では今から迎えに行くからうちに泊まりなさい」と言ってくれた。見ず知らずの日本人の若造が突然やって来たのに、ありがたい好意だった。
 その家は、建てられてから100年以上(もしかしたら200年近く?)はたっている古い家で、土地から掘り出してきた石(岩)を積み重ねて壁にしていた。壁厚は優に60cmはあっただろう。その厚みで冷気の侵入を防ぎ、冬の間も暖かな空間を維持していたのだ。アメリカの開拓時代の空気が、その家にはまだ閉じこめられているようだった。
 旅の話に花を咲かせながら夕飯をごちそうになる。その晩は、久しぶりに家庭の温かさを感じ、ホテルにはないぬくもりのあるベッドでぐっすりと眠った。(つづく)
Commented by moko at 2006-12-03 15:23 x
私も、先月こちらの写真展をみました。
そして、文明と距離を置いた生活をしている人もいるんだなぁ。
と、改めて思いました。(ようく考えれば、いても当たり前なのですが・・・)

なんでも、自分の生活を基準に考えていると
たまに、こうして”はっ”と思い知らされることがあります。
Commented by mory_and_meg at 2006-12-04 13:58
mokoさん、コメントどうもありがとうございます。自分と価値観の異なる世界に生きる人々がいる。いや、その方が圧倒的大多数なのだ。当たり前だけれども、つい忘れてしまいがちなこの事実を、いつも心にとめておきたいものです。 by Mory
by mory_and_meg | 2006-11-19 17:29 | Journey | Trackback | Comments(2)

循環する暮らしを創造するMoryとMegの便り。畑、食、心身、先住民の智慧、Art、旅等Megは練馬区石神井公園にて女性専用鍼灸整体 音叉サロンを主宰しています。 All rights reserved. 写真・文章の無断転載を禁じます。


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