ドキュメンタリー・ドリームショー by Mory
2006年 09月 27日
上映されるのはテレビでは決して見ることができないだろう作品ばかり。世界はこんなにも多様なのだ。しかし、その多様性を破壊し尽くそうという大きなうねりが世界の隅々にまで押し寄せているという現実を、またかいま見ることとなる。
『ファイナル・ソリューション』というインドの作品。ヒンズー教徒とイスラム教徒の歴史的な対立から起こっている現実を両者の側から描いたもの。そのラストシーンで、ヒンズー教徒の監督が、イスラム教徒のまだ小学生になるかならないかの少年に問いかける。「君は将来どうしたい?」
少年は答える。「ぼくは家族を殺した悪いヒンズー教徒を殺すために兵士になるんだ。」
監督 「おじさんもヒンズー教徒だよ。おじさんも殺すの?」
少年 「おじさんはヒンズー教徒なんかじゃないよ。ヒンズー教徒はそんな話し方しないもの。おじさんは殺さない。でもぼくは大きくなったらヒンズー教徒を殺すんだ。」
家族を目の前で殺され、その光景を目撃した無垢な瞳で少年は語る。いま"ぼくら"が作り出した世界は、このような子どもたちを毎日作り出している。
生後5か月を過ぎたばかりの幸せに満ち足りたわが息子と、家族を目の前で殺された少年。この大きな落差の前に、何ができるのかと呆然としてしまう。ひとつ忘れたくないのは、政治家やマスメディアと言ったパワーを持つ側からの、憎悪をあおり不寛容を押しつけるプロパガンダに、決して乗るまいと言うこと。争い、傷つき、いのちを落とすのは、結局は力のない貧しい者たちなのだから。