岡本太郎「明日の神話」 by Mory
2006年 08月 28日
悲劇の瞬間を描いているというのに、何だこれは!?原爆の劫火に包まれた人々が、妖しく踊っている。絶望的状況も何のその、そんなものに負けてたまるかというしたたかな生きるエネルギーがあふれ出ていた。
間近で見ると、太郎の筆の跡が生々しい。37年の行方不明という歳月ののち、壁画を探し出した敏子の執念。そして一年をかけ、その筆跡を極限まで忠実に修復した人々の職人魂。様々な人間のエネルギーと物語が、あの巨大な壁画に乗っかって、呪術的パワーを解き放っている。
汐留という現在の日本を象徴する空虚な空間に展示されたことは喜ばしいことだ。太郎も敏子(の写真)も壁画を見ながら笑っていた。神話を失い、飼い慣らされた現代日本社会へ、実は痛烈な一撃を与えるために、この壁画は遠くメキシコの地から運ばれてきたのではないか。そんなことを考えてしまう。
公開は31日まで。